「東大に入れば、人生は成功する」
中学生の頃の私は、どこかでそんなふうに考えていました。
中学3年生で「東大に行こう」と決めた理由も、今振り返ればとても単純です。
田舎を出て東京へ行きたい。
いい大学へ行けば、いい会社に入れる。
そして、学歴があればお金持ちになれる。
そんな子どもらしい憧れでした。
その後、高校時代は勉強を優先し、現役では不合格。一浪して東京大学に合格しました。
東大を卒業したあとは総合商社へ入社し、23年間働きました。
そして会社を辞め、自分で事業を始めました。
50歳を過ぎた今、改めて自分の人生を振り返ってみると、はっきり分かることがあります。
東大に合格したから、人生が成功したわけではありません。
東大は、私の人生を大きく変えた一つのきっかけでした。
しかし、大学を卒業してからの人生の方がはるかに長く、その後には数え切れないほどの選択がありました。
就職。
仕事。
海外での挑戦。
退職。
起業。
結婚。
子育て。
その一つひとつを自分で選びながら、今の人生があります。
「東大に入れば人生は成功するのか?」
シリーズ最終回では、東大を卒業して30年近くたった今だからこそ思う、学歴と人生について書いてみます。
第1章 東大で一番夢中になったのは、勉強ではなかった
一浪して東京大学に合格したときは、もちろん嬉しかったです。
中学3年生から目標にしていた大学でした。
しかし、実際に東大へ入ってからの4年間を振り返ると、私が一番夢中になったのは勉強ではありませんでした。
格闘技の部活動です。
毎日の練習。
仲間と過ごす時間。
試合に向けた準備。
どうすれば強くなれるのかを考え、練習する日々。
大学時代の思い出として真っ先に浮かぶのは、教室で勉強している自分より、部活動に取り組んでいる自分です。
卒業論文以外は、大学で必死に勉強したという記憶もそれほどありません。
それでも、私にとって東大で過ごした4年間は、かけがえのない時間でした。
東大へ入る前の私は、「東京大学」という名前そのものに大きな価値を感じていました。
しかし実際に入ってみると、大学の価値は肩書きだけではありませんでした。
そこで誰と出会い、何に夢中になり、何を経験するか。
私にとっては、そちらの方がずっと大きかったように思います。
第2章 社会に出たら「東大卒」だけでは評価されなかった
大学卒業後、私は総合商社へ入社しました。
その会社で23年間働き、世界各国でさまざまな仕事に挑戦しました。
就職活動の段階では、「東大卒」という学歴がプラスに働いたことはあったと思います。
学歴によって、挑戦できる機会が広がることはあります。
その意味で、私は学歴に価値がないとは思っていません。
しかし、会社へ入ってしまえば話は別でした。
「東大を卒業した」というだけで、仕事の成果が出るわけではありません。
実際の仕事で評価されるのは、
成果を出せる人。
新しいことに挑戦できる人。
周囲から信頼される人。
問題が起きたときに、自分で考えて動ける人。
そういう人たちでした。
学歴は、社会へ出るときにいくつかの扉を開いてくれることがあります。
しかし、扉を開けたあとにどう歩くかまで、学歴が決めてくれるわけではありません。
東大合格はゴールではありませんでした。
むしろ私にとっては、その後の長い人生のスタート地点の一つだったのだと思います。
第3章 会社を辞めて分かった、人生は思い通りにはいかない
総合商社で23年間働いたあと、私は会社を辞めました。
そして、自分で事業を始めました。
会社員時代とはまったく違う人生です。
東大を卒業して、総合商社へ入り、そのまま定年まで働く。
中学生だった頃の私が想像していた「成功した人生」は、おそらくそんなものだったと思います。
しかし、実際の人生はそう単純ではありませんでした。
会社を辞め、自分で事業に挑戦してみると、思いどおりにならないことはいくらでもあります。
東大卒という肩書きがあっても、事業が成功する保証などありません。
それでも私は、会社を辞めたことを後悔していません。
50歳を過ぎて自分の人生を振り返れば、
「あのとき、こうしておけば良かった」
と思うことはいくつもあります。
しかし、それと「自分の人生を後悔している」ということは、私の中では違います。
東大を目指したこと。
格闘技の部活動に入ったこと。
総合商社へ就職したこと。
海外で新しい仕事に挑戦したこと。
会社を辞めたこと。
自分で事業を始めたこと。
そして、結婚したこと。
人生の大きな選択では、人の話を聞いたり、調べたり、迷ったりしました。
それでも、最後に決めたのは自分でした。
だから、うまくいかなかったことも含めて、自分の人生として受け止められるのだと思います。
第4章 もし東大へ行っていなかったら、私は不幸だったのか
時々、こんなことを考えます。
もし中学3年生のときに東大を目指さず、地元の国立大学へ進学していたら、私はどんな人生を送っていただろう、と。
高校では部活動を続けていたかもしれません。
大学では、まったく違う仲間と出会っていたでしょう。
就職した会社も違ったはずです。
東京へ出ていなかったかもしれません。
今とはまったく違う人生になっていたと思います。
では、その人生は「失敗」だったのでしょうか。
私は、そうは思いません。
おそらくその人生でも、その時々で自分なりに考え、進む道を選んでいたと思います。
そして、その人生の中で出会った人たちと過ごし、自分なりの幸せを見つけていたのではないでしょうか。
東大へ行った人生だけが、私にとって唯一の「正解」だったとは思いません。
人生には、選ばなかった道が無数にあります。
どの道を選べば必ず幸せになれるのかは、選ぶ時点では誰にも分かりません。
だから大切なのは、
「絶対に正しい道を選ぶこと」ではなく、「自分で選んだ道を、その後どう歩いていくか」
なのではないかと思っています。
第5章 息子たちに「東大へ行ってほしい」とは思わない
今、私には2人の小学生の息子がいます。
将来、彼らがどんな道を選ぶのか、私はとても楽しみにしています。
東大を目指してもいい。
目指さなくてもいい。
大学へ行ってもいい。
高卒で働いてもいい。
サラリーマンになってもいい。
起業してもいい。
スポーツに打ち込んでもいい。
今はまだ存在しないような仕事を選ぶかもしれません。
私は、自分が東大を卒業したからといって、息子たちにも東大へ行ってほしいとは思っていません。
なぜなら、「どこの大学を卒業したか」が人生の最終的な成功を決めるわけではないと、自分自身の人生を通して感じているからです。
もちろん、息子たちが自分から、
「東大へ行きたい」
と言う日が来れば、私は応援します。
私自身の失敗も含め、知っていることは伝えるでしょう。
でも、最終的にどの道を選ぶかは本人に決めてほしいと思っています。
親が決めた「正解」の人生を歩くのではなく、
自分で考え、自分で選ぶ。
その経験を積み重ねてほしいのです。
第6章 大切なのは「自分で選んだ道を正解にすること」
小学生の頃、私は日が暮れてボールが見えなくなるまで、友達とソフトボールをして遊んでいました。
誰かに、
「将来のためにソフトボールをしなさい」
と言われたわけではありません。
ただ、楽しかったからやっていました。
自分たちで遊びを決める。
うまくいかなければ工夫する。
友達と意見が違えば話し合う。
負ければ悔しがり、また次の日に挑戦する。
今振り返ると、そういう経験の積み重ねが、自分で考え、自分で決める力につながったのかもしれません。
人生には、正解が分からない選択が何度もあります。
どの大学へ行くのか。
どんな仕事をするのか。
転職するのか。
起業するのか。
どこで暮らすのか。
誰と人生を歩むのか。
どれだけ調べても、選ぶ前に「これが絶対に正解だ」と分かることはほとんどありません。
だから私は、
正解を選ぶことより、自分で選んだ道を正解にしていくことの方が大切
だと思っています。
自分で決めたなら、うまくいかないときにも考える。
修正する。
必要なら別の道を選び直す。
そして、また進む。
その力があれば、学歴や肩書きが変わっても、自分なりの人生を歩いていけるのではないでしょうか。
まとめ|東大は人生のゴールではない
この「10の誤解」シリーズでは、私自身の経験をもとに、東大受験について書いてきました。
小・中・高とずっと一番でなければならない。
塾へ行かなければ東大には受からない。
小学生から受験勉強を始めなければならない。
部活をすると受験に不利になる。
天才しか東大には受からない。
地方からでは不利。
東大生は勉強だけをしている。
そして、
東大に入れば人生は成功する。
私自身、中学生の頃には、こうしたことの多くを信じていました。
しかし、実際に受験し、東大へ入り、社会に出て、50歳を過ぎてから振り返ると、見え方はずいぶん変わりました。
東大に合格したことは、私の人生に大きな影響を与えました。
だからといって、東大に入ったから幸せになれたわけでも、人生の成功が保証されたわけでもありません。
私がこのシリーズで本当に伝えたかったのは、「どうすれば子どもを東大へ入れられるか」だけではありません。
子どもが自分で考える。
自分で選ぶ。
失敗したら考え直す。
そして、もう一度挑戦する。
自分の人生を、自分で切り開いていける人になること。
私は、それが東大合格よりもずっと大切だと思っています。
東大へ行ってもいい。
行かなくてもいい。
大切なのは肩書きではありません。
自分で考え、自分で選び、その選んだ道を正解にしていくこと。
それが、東大を卒業して30年近くたった今、私が子どもたちに一番伝えたいことです。
「田舎の公立高校から東大に入るための10の誤解」全10項目はこちらにまとめています。
→ 地方公立高校から東大へ|塾なし・一浪で合格した私が考える10の誤解
子どもの進路についても、私は「東大へ行くこと」をゴールにはしていません。
私も妻も東大卒ですが、息子たちに「東大を目指せ」とは言っていません。その理由はこちらに書きました。


コメント